Nice Music! That hits the spot!

良い音楽との良い出会い。それは生涯追求し続けたいテーマ。

Steve Miller Band / Seasons

f:id:abetomoy:20200404163700j:plain

今回のご紹介はアルバムではなく曲。「Seasons」という曲。

ティーブ・ミラーという人は、1960年代後半から、ずっと第一線にいて、2016年には「ロックの殿堂」入りしたという大変な方。日本でももちろんメジャーだけど、本国アメリカではもっともっと評価が高いらしい。僕もそれなりにはチェックをしてきたのだけど、でもそんな言うほどにはって感じでいまいちピンと来ないぞと思っていた。

ところがある日、この「Seasons」という曲と出会った。

何か山の奥深くで出会った秘境の滝の周囲に漂うオゾンたっぷりでちょっと冷えて凛とした空気のような、とても清い感じの曲だ。アコースティック・ギターのバッキングに、彼の朴訥なボーカル、それに要所要所に入る透明感ある声でのコーラス。

自分もアコギで歌う人間として、こんなにも清く、心に響く曲を歌えるようになりたいものだという気持ちとも相まって、とても印象深い曲だ。

実はこれを聴いて、この曲が入っているアルバムをタワレコonlineで買ってみた。1969年発表の「Brave New World」 というアルバム。さっそく聴いてみて唖然。全然違う曲。えーっと思って聴き比べたら確かに同じ曲なのだけど、アレンジが全然違って、なんかいい意味ではなく粗削りなのだ。

その後調べて、この曲は2017年に「Ultimate Hits」というオムニバス版を出す際にセルフカバーを録音しているようで、最初に聴いたのはこっちのバージョンだった。

そのセルフカバーの録音をいつしたのかは不明だが、最初の録音の1969年からは40数年くらいを経ている。そうなると、その間のさまざまな人生経験や辛酸の末に醸成された人間としての幅やキャパシティーによって、あのバージョンの清く心豊かな楽曲が生まれたのではないかという気がする。

Maria Muldaur / Don’t you feel my leg

f:id:abetomoy:20200404163458j:plain

僕がこのマリア・マルダーを知ったのは1975年、高校2年の時。当時愛読していた「ニュー・ミュージック・マガジン」にあった、小倉エージ氏の「ウエスト・コースト・ロックをみる」という、西海岸音楽旅行レポートみたいな特集でだ。「何とも表現しがたく失神寸前になったのがマリア・マルダーのコンサート」と興奮一杯に、4枚のステージ写真とともに記されていたのを見てなんか身体がうずうずしてきたのを思い出す。

それからすぐにファーストアルバム「オールド・タイム・レイディ」を入手し、あの声に高校生ながら悩殺されてしまって以来の大ファン。もちろん日本公演も行った。

ちなみに、この「オールド・タイム・レイディ」というアルバムタイトルは日本でつけられたもので、アメリカ版は単に「Maria Muldaur」というタイトル。当時、いろんな曲やアルバムに日本語題が付けられ、しばしば妙にロマンチックなちょっと気持ち悪いのも少なくなかったのだけど、この「オールド・タイム・レイディ」というのはマリア・マルダーファンとしてちょっとうれしくなる良いタイトルだと思っている。

f:id:abetomoy:20200404163528j:plain

ファースト・アルバム「オールド・タイム・レイディ」

しかし、そんな大ファンと言いつつも、実はここ20年くらいはたまに古いアルバムを聴くくらいで動向チェックをしていなかったのだけど、そんなある日Apple Musicのプレイリストに久々現れたのがこのアルバム(実際にはこの中の1曲だったのだけど、どれだか忘れた)。

かつては若かった彼女も今や76歳。声が少ししゃがれたばあさん声になってきた。でも、同窓会で数十年ぶりに再会してこのじいさん誰だ?と思っても、少し話していると昔の記憶がぐわっと蘇ってくるように、久々のしゃがれ声のマリアもしばらく聴いていると、その声の中にあの僕を悩殺したマリアが蘇ってくるのだから不思議だ。

このアルバムは、ブルー・ル・パーカーというブルースシンガーへのトリビュートなのだそう。アルバムタイトルになっている「Don‘t you feel my leg」は、上述の「オールド・タイム・レイディ」に入っていた曲のセルフ・カバー。前のバージョンの最後には「ウッウン」という意味深なうめきっぽい声が入っているのだけど、今度のカバーでは「アゥ、アゥ、アゥ」っていう終わり方。これがなんとも艶っぽくて良いのだ。文字で書くとバカみたいなので、是非聴いてみてほしいです。

Roberta Flack / Roberta

f:id:abetomoy:20200404162914j:plain

「Sweet Georgia brown」という曲を通じてこのアルバムを知った。ロバータ・フラックと言えば、1973年の「優しく歌って(Killing me softly)」や、その後ヒットしたダニー・ハサウェイやビーボ・ブライソンとのデュエット曲など、メロウな曲の人と思っていたのだけど、この曲は、冒頭こそふわーっと入りながらも0:18″あたりから、急激にタイトなファンキービートになり、そのビート感がとても気持ち良い。

この曲に出会ったころは、まだ会社勤めをしていた頃で、日々つらいことの多いストレス溜めた帰り道、このビートを聴くたびに、換気の悪い部屋の窓を開け放したときのような、なんかすがすがしいものが身体に注入されてくるような、そんな気分を味わえたことを思い出す。

その時実は、この「Sweet Georgia Brown」を、初めて聴く曲として認識したのだけど、その後知ったところでは、実は幼いころからメロディーを知っていた、ジャズの超スタンダードな曲だった。

 


Sweet Georgia Brown - Louis Armstrong

 

このアルバムは、1994年の発表されたもので、ほとんど全曲ジャズやR&Bのカバー曲で構成されたアルバム。このアルバムのロバータが僕はとても良いと思うのだけど、一部のツウには受けつつも、セールスはあまり伸びなかったようだ。

良い評価としては、古いスタンダード曲に新しい命を吹き込んでいるなんていう賛辞があった一方で、この「Sweet Georgia Brown」については、「なぜこんな過剰なアレンジの失策で聴き手を悩ませるのか」というような評論もあったらしい。

このファンキービートのアレンジは、古き良き曲をこよなく愛する評論家先生の保守的な音楽理解キャパシティーをはるかに超えてしまったのだろう。マニア故の不自由さというのか。幸いなことに、私はそんなにマニアじゃなくてよかった。おかげでこの曲にはずいぶん救われたものだ。

Santa fe & the Fat City Horns / Let The Healing Begin (Live In Las Vegas)

f:id:abetomoy:20200404151153j:plain

このバンドは、日本ではまだCDも何も発売されていなく、ネットを探っても日本語で読める情報がほとんどない。調べてところでは、ラスベガスのホテルでレギュラー出演している15人編成のファンク・バンドのようだ。

ある日出張で泊まったホテルのラウンジに行ったらこんなバンドがライブやってたなんて言ったら、もうそのまま昇天しちゃっても良いくらいの大興奮モノだなと思ったけど、そこはラスベガス、よくあるロビーラウンジでやってるフィリピンバンドのようなものではなく、館内のちゃんとしたホールでちゃんとお金を取って見せるライブショーがあり、そこでやってるバンドなのだ。

「Santa fe」?「Fat city」? 何だか長くて不可解なバンド名。ギターを弾いてるジェリー・ロペスという男がリーダーでニューメキシコ州サンタ・フェの生まれ。その彼がラスベガスの音楽クラブを中心に活躍してるミュージシャンを集めて結成したバンドで、察するに「Fat City」っていうのは、サンタ・フェ生まれの彼の目から見たラスベガスのことではないか。つまりこのバンド名は、内山田洋とクールファイブと同じリーダー+バンド名の文型で、サンタ・フェ生まれの俺様ロペスと、Fat Cityラスベガスのホーンを中心とした連中を集めたバンドだぜってことなのかと理解した(私の推察です)。

さて、肝心な音について。これがかなり凄い。本当に凄腕。バリトン・サックスのどっしりした低音も含めてホーン隊が6人、それにタイトなリズム隊。さらに、リードとれるボーカルリストが5人いるらしい。聴いてすぐに思い浮かべたのはタワー・オブ・パワー。まさにあの感じの、ビシビシ・キビキビ、キメだらけのリズムに、これまたメリハリバンバンのホーン、手数の多いドラム含めてあのタワー・オブ・パワーの感じ。そんなビシバシ・ファンクの間に、しっぽりバラードもやるし。(語彙が乏しく、擬態語多用ですみません)

それにしても、こんな凄いバンドがハウスバンド的にレギュラー出演しているホテルがあるなんて、ラスベガス恐るべし。アメリカ恐るべしだ!

f:id:abetomoy:20200404144309j:plain

バンドの演奏風景(オフィシャルFacebookより)

 

Garth & Maud Hudson / Live at the Wolf

f:id:abetomoy:20200404163012j:plain

ご存じザ・バンドのガース・ハドソンと奥さまモード・ハドソンの2ピースユニット「Garth & Maud Hudson」がカナダ・オンタリオにある400人弱の小さなホールでのライブを収録したアルバムが「Live at the Wolf」。

ガース・ハドソンの写真を初めて見たのは中学生くらいの頃。その時はびっくりした。ロック好きの従兄が持っていたザ・バンドのアルバムのジャケット写真だったのだけど、当時ロック・ミュージシャンと言えば、カッコ良いもんだと思っていた。だけど、彼らはなんだか炭鉱町のおっさん達って感じで、その中でもガース・ハドソンはむくみ気味のデカ顔に極端な奥目、髪型もヒゲも異次元な感じで、こういう人たちもロックをやるんだ、って意外に思ったのを覚えている。

f:id:abetomoy:20200404142929j:plain

ザ・バンド。右から2人目がガース・ハドソン。

そんな失礼な話はさておき、音の方は打って変わって、なんと言ってもガースのピアノの表現力が素晴らしい。ピアノという楽器の良さをこれでもかというくらい引き出している。ホールに響き渡る音色も良いし。それにモードのちょっと低めのボーカルもそれに劣らず表情豊か。小さなホールでリラックスしてやってる感じながらも、何か神聖な空気感が漂ってくる。

12曲目は、あの「The Weight」。ラスト・ワルツの中で、ステイプルズの女性が歌ってるちょっとゴスペルが入ったファンキーな感じを思い出させるところもある。モードのシンコペーションを効かせたボーカルと、縦横無尽に動き回りつつ、抑えるところはぐっと抑えたガースのピアノ。ザ・バンドの泥臭い感じとはずいぶん違って、何かとても清らかで透明感あって、心洗われる感じに仕上がっている。

The Spandettes / Sequin Sunrise

f:id:abetomoy:20200404163111j:plain

「スパンデッツ」と読む。ある紹介ではカナダ・トロント出身のディスコ・ソウル・バンドとあるけが、今どき「ディスコ・ソウル」って何だ?まあ、それはさておき、とにかく明るくて気持ち良い曲たち。何か幸せの粒がスピーカーから大量に振りまかれてくる感じ。最初聴いていてエモーションズを思い出したのだけどあんなにブラックな感じじゃない。また、かなりジャズがベースでブランニューヘヴィーズのようでもあるけどあんなに都会的に洗練されたという感じでもない。緩やかでリラックスしたハッピー・ミュージックという感じ。

実際曲を聴いていくと、ジャズのベースがありつつも、キャピキャピしたポップス調があったり、レゲエっぽいのがあったり、コーラスがカントリーっぽかったり、いろんな気持ち良い音楽が楽しく奔放に混ぜ込んでいる。

ジャケットに写ってる3人の女性はフロントのボーカリストで、それにホーンセクションも含めた演奏隊が7人、全部で10人編成のバンド。と言いつつ、2015年、ビルボードでのライブで初来日した時には、予算が少なくホーン隊まで連れてこれないなんてこともあったらしいらしい。そのために、アレンジも変え、ホーンのパートをコーラスでやったりという工夫をしたのだと。別途ソロ活動をしている人も多く、バンドといいつつ、臨機応変・変幻自在なセッションチームなのだ。

YouTubeでは、アコースティックなバッキングの映像が見られる。コーラスワークが良いので、シンプルなバッキングでも十分に楽しい。それと、映像で見る彼女たちは結構ぽっちゃりな方もいたりして、地方都市のお嬢さんたちが着飾ってきましたという感じの何ともほんわかした風で、そこがまた、緩くて良い。音的にはおしゃれなジャズなのだけど、ドレスコードも何もない、なんでもありのほんわかリラックス系音楽です。