Nice Music! That hits the spot!

良い音楽との良い出会い。それは生涯追求し続けたいテーマ。

The Doobie Brothers / Livin’ on the fault line

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今週は、Apple Music のプレイリストであまり良い曲との出会いができてない。そこで今回は、プレイリストには入っていたけど、「Apple Music が教えてくれた」わけではない、もともと好きだったアルバムを取り上げる。

これは、ドゥービーの7枚目、マイケル・マクドナルド加入後の2枚目、彼らのアルバムリストの中では少し地味目なアルバムだ。

ドゥービー好きの間での1番好きなアルバムは何だという議論は、侃々諤々になってなかなか楽しい。その際のひとつのポイントは、マイケル・マクドナルドの加入をどう見るかということ。まず言っておくと、僕は彼の加入はとても良かったと、彼のおかげで音楽の幅が広がりより素晴らしいドゥービーになったと思っている。

ただ1点告白だが、僕はドゥービー好きを公言していながらも、リアルタイムでフォローし始めたのは一旦解散した後の再結成あたり(89年頃)から。全盛期のころには、実はちゃんと聴いていなかった。なので、マイケルの加入についても、それによって音楽が大きく変わったという衝撃をリアルタイムでは経験していない。その後、マイケル入りドゥービーが賛両論ありながらもそれなり評価を受けるようになってから両方を聴き、マイケル加入後のがかなり良いぞ!と言っているのだ。そういう意味では、生っ粋のドゥービー好きからすれば青二才黙ってろって話かもしれないけども、そこはひとつ勘弁を。

マイケル・マクドナルドという人は、ロック・ジャズ・ソウル・ファンク・ブルースなどいろんな音楽性を合わせ持っていて、実に情感豊かなメロディーを書く人だと思う。このアルバムの1曲目、「思いのままに」という邦題がついてる「You‘re made that way」という曲などは、まさにそんな曲。イントロを聴いてるだけでワクワクしてくる。和音の変化がなんとも言えなない。「What a fool believes」でも「Minute by minute」でも、イントロのエレピが聞こえた一瞬でその曲の世界が広る。

思うのは、マイケルのこうしたワクワク感溢れるメロディーが、その後の彼のソロ活動の中ではあまり生み出されなくなっているのではということ。ドゥービーにいた5~6年の間に作られた曲の良さがズバ抜けている。その後の彼に何が起こったのかはわからないのだけど、ドゥービーにいたこの数年間は、彼の音楽人生の中で本当に光輝いていた時期なのだと思う。(本人の話も聞かず、シロートのオヤジが勝手に決めつけて申し訳ないけど)

マイケル加入前の、疾走感溢れるやんちゃなギターバンドのドゥービーが本来のドゥービーなのだという話も分からなくはない。でも、類まれな音楽センスを持つマイケルが、数年間でほとんど一生分の才能を注ぎ込んで作り上げた加入後のドゥービーサウンドは、ドゥービーの音楽に本当に深く豊かな味わいを加えている。それがもともとあった彼らの良さと結びついて、より強靭なバンドになっていったのではないか。

そういう意味では、マイケル自身にとっても、この出会いは良かったのだと思う。彼の生み出すメロディーに対して、バンド全体が曲をより良いものに磨きあげている。才能ある個人ともともとは少し違う性格が違ったバンドのコラボが、奇跡的な化学反応を起こすことに成功した事例なのではと思った。

実はドゥービーのアルバムは、それぞれの良さがあって、2枚目「Toulouse street」から9枚目「One step closer」までは、どれも好きで甲乙つけがたい。本当にみんな良い。でもそんな中で、このアルバム「Livin‘ on the fault line(「運命の掟」という邦題)」は、1曲目「You’re made that way」から2曲目「Echoes of love」の繋がりが、上述の奇跡の化学反応がとても感じられるということと、他に比べて少しマイナー感あるこの子に光をあてる意味でもこのアルバムを取り上げてみた。

Carly Simon / Into White

 

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はい。あのカーリー・サイモン

もともと裕福な家庭に生まれ育って、たくさんの男たちと恋をして、たくさんのヒット曲を世の中に送り出して、人生勝ち組で生きてきましたという感じの彼女。今や70歳を過ぎて孫に囲まれてのゆったりした日々を過ごしているようだ。

新規制作のアルバムとしては2009年が最後のようで(ベスト盤はのぞいて) 、それ以前10年くらいは、ゆったり自分のペースで、古き良き名曲のカバーを歌ったり、フルオーケストラでジャズを歌ったりと、ベテランの余裕を漂わせながら好きな音楽をやってきた感じ。このアルバムはそんな中の一枚、2005年の作品。

これまでの彼女のアルバムは、夜な雰囲気やゴージャス/エレガント系のジャケットが多かったのだけど、今回は、木々のグリーンとやわらかい太陽の光に満ちた自然派志向。マサチューセッツ州にあるアーチストが多く住む島にある自宅の庭なのだろう(この自宅は元旦那のジェイムス・テーラーと住んでいた家らしい)。そんなあたりも、スーパースターっていうギラギラ感はなく、人生成功者の余裕が感じられる。

ウィキペディアによれば、当初カーリーはロックンロールのアルバムを作りたいと思っていたようなのだけど、レコード会社から「子守歌」のアルバムを作ってみないかという提案があり、「子守歌は、自分の子供たちに向かって歌ってきたし、今でも歌ってる」というようなことで同意し、そうして出来上がったのがこのアルバムだそうだ。

それにしても、「子守歌」というお題に対してこういう答を出してくるとは。さすが、腐ってもカーリー・サイモン(ちょっとことば悪いか。別に全然腐ってるわけではなく、言いたいのは「バリバリの第一線は退いても」っていうこと)。多くがカバー曲で、ビートルズの「Blackbird」、ジェイムス・テイラーの「You can close your eyes」、S&Gの「スカボロ・フェア」、それに「You are my sunshine」、「Over the rainbow」など誰でも知ってる曲を奔放なアレンジで子守歌に仕上げている。

僕たち大人は、子守歌だからって寝るために聴くんじゃなくていい。静まり返った深夜このまま寝るのも惜しいなんてとき、しんしんと夜が更けてゆくとともに広がるいろんな想いに、このアルバムの曲たちは静かなワクワク感を与えてくれる。

Orleans / ‘75 Live Harvard Square

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「Dance with me」でお馴染みのオーリアンズ。これは2010年発表のアルバムながら、1975年のライブ、発売時点で既に35年前になるライブを収録したものだ。ちょうど「Dance with me」が大ヒットしたその年、ちょうどぐんぐん勢いをつけていた頃。

「Dance with me」は、前年に出した彼らのアルバムに収録されていたのだけど、どうもそのレコード会社とは関係がうまくいっていなかったようで、そのアルバムはアメリカでは未発売。翌1975年、ウエスト・コースト・ロックで勢いがあったアサイラムと契約し直して発表されたアルバム「Let there be music」(「歌こそすべて」という邦題)に再録音をしたものを入れたのがヒットしたのだそう。

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アルバム「Let there be music」

さて、このライブ・アルバムには「Dance with me」の他に「Let there be music」や、「Time passes on」(「愛が過ぎて行く」という邦題、邦題に「愛」というワードを入れたがった当時のトレンドが見える)など、そのアサイラムのアルバムからの曲や、移籍前に出したアルバムの曲に加え、ちょっと異色で面白いのが「If the rabbit had a gun」「Fat mama blues」といった1930年頃の古いブルースをカバーした曲。

さわやかなシティー・ロックという感じの彼ららしくない、南部の泥臭い雰囲気なのだけど、どうもバンドの中心であるジョン・ホールは、もともとこうした音楽志向を強く持っていた人のようだ。バンド結成前には、ブルース系の人たちとのセッションも多くギターソロ弾きまくりのようなこともしていたらしい。スタジオ・アルバムには、なかなか入らないけどもライブでは演奏されるというこの手の曲を聴くことができるというのもこのアルバムの貴重なところだ。

ところでこのバンド、日本でのカタカナ表記では「オーリアンズ」というのが一般的。でもスペルを見ると「Orleans」で、これは南部ルイジアナの観光都市「ニューオーリンズ(New Orleans)」の「オーリンズ」と同じスペルだ。この違いはなんだ?と思って調べてみると、どうもアメリカ人の中でも話し手によっていくつか言い方があるようだ。かなり一般的な言い方としても2通り、①「ヌオリアンズ」で「オ」にアクセントが来る言い方と、②「ヌオリーンズ」で「リーン」にアクセントが来る言い方、、さらに地元のルイジアナ訛りが入った言い方だと、③「ヌオーランズ」で「オー」にアクセントが来るものと主なものだけでも3通りあるようだ。

このアルバムの冒頭では、ライブのスタートで彼らを紹介するMCの声が入っていて、そこでは②に近い「オリーンズ」(アクセントは「リーン」)という感じで言っている。でも、いろいろ調べると上記①的発音もそれなりメジャーではあるようなので「オーリアンズ」でも間違いではなさそうだ。そして「ニューオーリンズ」もカタカナ表記としては間違ってない。でもいずれにしても、アクセント含めカタカナ英語のままで本国に行って通じるかどうかは別だけど。

John Oates / Miss the Mississippi and you

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ジョン・オーツ。そう、あのホール&オーツのオーツ。

ホール&オーツは結成50年にもなるのだけど、その活動の後半では、野心むき出しのダリルが1人で目立ってメジャー街道を進むようになり、ジョンは脇に追いやられてしまった感じがある。だけども、実は渋く深い独特の世界を持っている人。僕が通ってるロックバーでも大変評価が高い。

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ダリル・ホール(左)とジョン・オーツ(右)

ソロ曲を聴いてて思うのは、普通に声出して歌う歌も良いのだけど、喉の奥から絞り出すような声でじっくりしっとり歌い上げる曲がじわっと心に染みてきて素晴らしい。ホール&オーツではあまり見られない(聴けない)ジョン・オーツの魅力だ。

そんなジョン・オーツの良さがとても出ているのがこの「Miss the Mississippi and you」。ジミー・ロジャースというカントリー・シンガーが1932年にリリースした以降、多くの人がカバーをしている曲。作者がBill Halleyとなっていて、えっ、あの「Rock around the clock」の?とも思ったのだけど、1932年というとあのビル・ヘイリーはまだ7歳なので、たぶん別のビル・ヘイリーだと思う。

この曲が入っている「Arkansas」というアルバムは、これまた古いミシシッピー・ジョン・ハートという、1920年代から活躍しているデルタブルースのレジェンドみたいなミュージシャンへのトリビュートとして作られたものらしい。

アルバム全体では、カントリー色が強い。それにブルーグラスとかブルースとかいずれもかなり泥臭い曲が多い。ホール&オーツをどちらかで言うと後ろで支えていたジョン・オーツがこういうバック・グランドも持っていたのだなということがまた興味深い。

この曲「Miss the Mississippi and you」は、都会の生活に疲れて、遠い故郷のミシシッピーと残してきた恋人を想う歌だ。そんな寂しい気持ちを歌いながらも、曲としては寂しい気持ちをやさしく包み込んで癒してくれる。しっとりとしたやさしい曲だ。

こういう曲に出会えると、これからの人生、何かつらいことがあったらこの曲を聴けば良いんだって、心の安心と勇気が得られる気がする。大げさじゃない。良い音楽にはそれだけの力と効用があるのだ。


 

Blue sky riders / Finally home

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このバンドは、あのケニー・ロギンスが参加している3人組。あとの2人はジョージアミドルマン(女性の方)とゲイリー・バーという、ソロでも活動をしているシンガーソングライターだ。2人ともベテランな感じながらどう見ても、ケニー・ロギンスが一段も二段も格上なのだけど、そこはオープン・カルチャーのアメリカ、3人対等というか、むしろケニーが少し控えめにしている感じさえする。これまでにアルバムを3枚出していて、ユニットとしてはそれほど盛んな活動はしていないようだけど、今も継続しているようだ。

このアルバムは2013年に出された彼らのデビュー作。以前はフル・アルバムがApple Music に入っていたように記憶をしているのだけど、今見ると1曲だけしか入っていない。権利関係のモメごとでもあったのかな?これと出会って間もなく、輸入盤CDをお取り寄せでゲットしておいてよかった。

アルバムでは、ケニー・ロギンスの声がピンで聴けるのはほんの3~4曲くらい。ソロボーカルは他の2人の方が多いのと、あとはコーラスが美しい。曲は聴いていて元気が湧いてくるような明るく元気いっぱい。しかも、しっかりしたアレンジしっかりした演奏で実力派が集まって楽しみながら作ったアルバムという感じ。

雲に乗るという言い方はあるけど、青空には普通乗らない(乗れない)と思うのだけど、このユニット名はどんな発想でつけたのだろう?まあ、でもそんな突っ込みはさておき、青空と太陽が良く似合う音楽だ。

YouTubeに彼らのチャンネルがあり、ステージ映像とともに、リハーサルやオフを撮ったものもいくつかある。その中で、ソファーに3人並んでいろいろしゃべっていると思ったら、いきなり3人のコーラスが始まるのがあるので紹介をしておきます。なんのエフェクトもない生コーラス。素晴らしい!コーラスは2:20くらいから。


Blue Sky Riders All Access Pass: Music Lessons

Air supply / The singer and the song

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エア・サプライと言えば、80年代、日本が一番輝いていたころ、クルマや家電が世界を席巻して、高度成長の達成で十分豊になったし、これからもずっともっともっと豊かになっていくのなかって思えた時代、そんな時代に、潮風を感じさせるさわやかな曲を次々出して世界進出をしたオーストラリアのグループ。

最盛期は7人編成で、その後メンバーの入れ替えを繰り返しながら、今は元々コアメンバーだったラッセル・ヒッチコックとグラハム・ラッセルの2人になった。でも、このままエア・サプライとして活動を続けている。

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メインボーカルのラッセル・ヒッチコック(左) プロデュースも手がけるグラハム・ラッセル(右)

それにしても、このアルバムはすごい!

彼らのヒット曲の数々を、アコースティック・アレンジで収録しなおした、セルフカバーのアルバム。2005年の作品。もともと彼らの曲はさわやかさが売りだったわけだけど、楽器を絞って演奏をシンプルにし、ボーカルも2人のコーラスをかなり生な感じで録っていて、さわやかさが2倍・3倍増し!

アメンバー2人が長年いろんなことにトライして、2周も3周も回ったすえに行きついた境地、より純粋な歌の神髄的なところだけをすくいあげて音にしてみましたって感じだ。それになんと言っても歌のうまさが際立っている。

1曲目はあの「Lost in love」。基本、曲の感じは変わっていないだけど、ボーカルもギターもより先鋭的になって聴く者の身体に染み込んでくる。さらに聴いていくと、そういえばあーこんな曲も、おーこんなのもって感じで出てくる出てくる、実はこれまで僕はそれほど意識をしていたバンドではなかったのだけど、こんなにたくさんヒット曲があったのだなと改めて思う。で、繰り返しになるけど、それらがみんなよりさわやか、先鋭感あるアコースティック・アレンジで再収録されている。

濁った川の水が浄水場の流れの中ですっかりきれいな水に生まれ変わるように、こんなアルバムを聴いていると、日々の生活で濁ってしまった心が浄化されてくるのではと思う。

Counting Crows / Big yellow taxi

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ジョニ・ミッチェルが1970年に発表した楽曲のカバー。カウンティング・クロウズというのは、1991年にサンフランシスコで結成されたバンド。ウエストコーストのロックを正しく引き継いでいる感のあるバンドだ。

YouTubeでは、彼らのこの曲のPVが見られる。ニューヨークでロケしたもので、あのイエローキャブが印象的に出てくる。そんなことから、この「Big yellow taxi」っていうのはイエローキャブのことかと思ってしまうのだけど、ジョニ・ミッチェルは、自然を破壊してリゾート施設建設のために動いているブルドーザーのことを暗喩しているらしい。(そういえば、キャタピラーでもコマツでもその他の会社でも、世の中のブルドーザーのほとんどは黄色に塗られている。なぜだろう?)

この曲は、バケイションを過ごそうとして行ったハワイで迎えた最初の朝、ホテルのカーテンを開けて広がる大自然を眺めた時に、その視野の中に、ブルドーザーが自然を壊してリゾート施設の駐車場を作っていたのを見て受けたショックの気持ちを歌ったものらしい。

このカウンティング・クロウズは、全体的には朴訥というのか、もっと言うと粗野な感じなのだけど、この「Big yellow taxi」は、少しジャジーな女性コーラスの感じも含めて、何かちょっと洗練感が感じられるアレンジで、アルバム全体で感じられる朴訥・粗野な彼らも良いのだけど、この洗練感がこれはこれでとても良い。

なので、これもアルバム推し(上の写真は、この曲が入っている「Hard Candy」というアルバム)でも良かったのだけど、曲推しとしたい。